朝鮮総督府鉄道の電気機関車

形式称号規程

形式名は3文字のカタカナで表される。先頭1文字目は電気機関車を表す「デ」を冠する。2文字目のカタカナは動軸数を表し、3文字目は形式記号を表す。2文字目と3文字目は蒸気機関車や貨車と同様に1、2、3・・・をイ、ニ、サ・・・と表記する。この3文字のカタカナの後ろに、車両番号が記される。

意味
デロイ2電気(ンキ)機関車で6(ク)軸の1(チ)番目の形式、2号機

似た形式称号規程をもつ南満州鉄道(満鉄)にも鮮鉄同様に電気機関車が存在したが、こちらは鮮鉄と違った称号規程を電気機関車に適用していた。満鉄では動軸数を区別せず、電気機関車には一律「デキ」という記号を用い、その後にイ、ニ・・・と順番を表す記号を付けていた。(例:満鉄デキイ形

デロイ・デロニ形

デロイ形電気機関車の写真
東京芝浦電気府中工場で昭和18(1943)年3月に落成したデロイ形1号機。
画像出典:日本機械学会 編『機械工学年鑑』昭和18年,日本機械学会,昭和16-19,p.286 国立国会図書館デジタルコレクション (参照 2024-06-10)
形式製造年製造所両数
デロイ1943~1948東芝(府中)、三菱12
デロニ1943~1944日立4

京元線の福渓~高山間は急勾配の難所であり、同区間は1944年に直流3000Vで電化された。これに合わせて開発・製造されたのがデロイ・デロニ形電気機関車である。本邦初の直流3000V用機関車であり、鉄道省(→日本国有鉄道)のEF12形に似た外観をもつ。

終戦時に朝鮮半島に存在していたのは、デロイ形5両とデロニ形4両の合計9両であり、残りのデロイ形7両は終戦後に南朝鮮(韓国)側に発送された。韓国では中央線(もと京慶線)の電化計画のために保管されていたが、朝鮮戦争時に1両を残して持ち去られ、残った車両は電化前の1958年に解体された。北朝鮮側では京元線(後の平羅線)のほか満浦線などの新たな電化区間にも使用され、今世紀に入っても1両が現存している。

主要諸元(鮮鉄デロイ形)
軌間1435mm
車軸配置1C+C1
運転整備重量135t
全長(連結面間)19,060mm
車体幅3,100mm
動輪直径1,370mm
走輪直径860mm
電気方式直流3000V
動力伝導方式1段減速釣掛式
1時間定格出力2,250kW
1時間定格牽引力20,000kg
1時間定格速度41km/h
最大運転速度75km/h
制御方式直並列3段組合電磁空気単位スイッチ式
日本機械学会 編『機械工学年鑑』昭和18年,日本機械学会,昭和16-19,p.285 に掲載されている表を一部修正

参考文献